本日の朝日新聞29面にミナの森プロジェクトの記事が掲載されました。
「過疎地の祭りに都市の助っ人を」
「NPO、企業の参加探る」
過疎で継続が難しくなっている山村の祭りに、都市部の企業の力を―。
浜松市天竜区を中心に地域おこしを進めるNPO法人「ミナの森プロジェクト」(津ヶ谷寛奈代表)が、祭りを盛り上げたい集落と企業の仲介を企画している。
企業に山村との交流を続け、広げてもらう狙いがある。
プロジェクト副代表の上嶋常夫さん(63)は5月、天竜区春野の犬居地区を訪ねた。
豊かな山林と天竜川水系の気田川の清流に恵まれた地区だ。
和菓子店の3代目、瀬戸統祥(のぶよし)さん(53)と企画について意見交換した。
瀬戸さんが住む平尾など三つの自治会は毎年10月、合同で祭りを催している。
豪華な大人屋台と子ども屋台がそれぞれ1台ずつあり、地元の熱田神社を出発して地域を回る。
平尾自治会は昨年、日中は子ども屋台を蔵から出せなかった。
子どもが減って参加者がほとんどいなかったからだ。
夕方過ぎに他集落から中学生10人ほどが応援に駆けつけ、ようやくひき出せた。
平尾の人口は約100人。
20年前より約40人減った。
かつて笛や太鼓がにぎやかな屋台が通ると、交通整理の警官が出るほど道は人であふれた。
最近は町外で働く人も増え、祭りの維持も容易ではない。
上嶋さんが祭りへ企業の参加を提案すると、瀬戸さんは賛成した。
「にぎやかになるのはうれしい」
一方で心配もある。
瀬戸さんは「お年寄りは人見知りするかも。社員と住民がコミュニケーションを取れるかが問題だ」。
2人は「まずみんなで飲んで語り合おう」と、交流のきっかけを作ることを決めた。
長野県境にある天竜区水窪町草木地区の遠木沢など四つの集落は毎年12月、綾村神社で「霜月神楽」を細々とやっている。
三遠南信道の建設に伴う移転などで住民は減り続け、現在は4世帯6人ほど。
昨年は5人の元住民が駆けつけ、豊作などを祈る神事を仕切った。
「湯ばやし」「みかぐら」「剣の舞」などはもう20年ほど前に途絶えた。
上嶋さんは一昨年、祭りを見物したとき、集落の高齢女性が1時間ほどかけて神社まで歩いて来たのを知った。
「住民がそれほど楽しみにしていたことに驚き、感動した」。
この体験が住民の心のよりどころである祭りをなくしてはいけないという思いの原点となった。
「ミナの森プロジェクト」が考えたのは、山村の祭りと企業を結びつけることだった。
社員やその家族、知人らは祭りの準備から手伝い、当日は住民とともに盛り上げる計画だ。
企業には、祭りの後も、「保養地」として祭りが行われた山村を位置づけてもら、住民との交流を促す。
社員が心の健康を保ち、自然環境や地域の文化に関心を持つ機会を提供できる。
地域にすれば、祭りを続け、にぎわいをつくるきっかけになる。
社員の移住や、就業のパイプ作りになる可能性もある。
上嶋さんはいま、天竜区内を回り、協働センターなどで趣旨を説明している。
「都市部の住民は田舎暮らしに興味を持つ人が増えている。大勢集まれば過疎地の住民は自信を取り戻し、古里を見直すきっかけにもなる」と話している。
霜月神楽を仕切った一人、竹中重利さん(67)も、この取り組みに期待する。
「神楽を知る人がいなくならないうちに復活させたい。笑顔あふれる祭りをもう一度体験したい」
ミナの森プロジェクトでは交流を求める自治体や企業を募集中だ。
問い合わせは、電話053-987-0610へ。
(高田誠)